ラジオのある空間 (に加えてJ.S.バッハの話)
最近ではあまり聞かなくなってしまったのですが、ラジオは結構好きです。大して好きじゃなかった曲がラジオを通して聴くと良く聞こえたり、偶然の出会いの楽しみがあったり。FMラジオ特有の圧縮された音質も、それはそれで味があったりします(これは私だけかもしれないが)。ラジオで聞いて気に入った曲が、CD音源を聞くとなぜかげんなりする、なんてこともあったりします。
ラジオそのものが音楽というか、CDというパッケージングが作品であるのなら、ラジオ番組全体が一つ雰囲気を作り出すの作品、ある一つの観点からの解釈の提示という意味で一つの作品である、という見方もできるのかもしれません*1。ファッションに例えるなら、洋服一つ一つはデザイナーによる独立した作品であり商品であるけれど、それを取り扱うセレクト・ショップは単に流通における「川しも」に位置しているだけではなく、そのコンセプトと商品展開が一つの作品になっているし、消費する我々も服そのものとともにショップのブランディングをも購入している、という風に言える。
なんでラジオのことを語っているのかというと、先日CDウォークマンが壊れてしまって(私はipodを持っていない)、仕方なくMDウォークマンをひっぱり出してきて聞いていると、ずいぶん前に録音したきりまったく聞いていなかったNHK−FMの録音が残っていたんです。それを聴いていて「ラジオってやっぱいいなあ」と思いまして。
番組の内容のほうも興味深かったです。『夏の夜にJSバッハを聴こう二時間特集』みたいな感じで、音楽評論家らしき人が対談形式でバッハについていろいろ語りながらバッハの曲をかけていく、といった番組。ちょうど、「ここらで背伸びしてマタイ受難曲でも聞いてみようかな」と思っていたので、思わぬ収穫でした。これまで特にJ.S.バッハに深く関心を抱いたことはなかったので、なぜバッハの番組を録音しておこうとおもったのか全然覚えてませんが。
≪フーガの技法≫の最後の曲がバッハの死により未完に終わる、といったエピソードや、『19世紀的な時間感覚と20世紀的な時間感覚の変わり目が、ちょうどドビュッシーとラヴェルの違いに表れている』という話が印象的でした。
ただ、自分がバッハの音楽を深く理解するにはあまりにも時期尚早だな、というのを改めて実感しました。クラシックを日常的に聞くようになって、ほんの数か月余りなので。私には想像がつかないような深遠さを秘めているんでしょうね。それでも、現代音楽からJポップまであらゆる西洋音楽の基礎となっているだけあって、私のような超絶素人でも親しみが持てる側面も持っているのでしょう。
番組は深夜2時におわり、最後にはグレン・グールドによる81年版≪ゴールドベルク変奏曲≫のアリアをかけて終わるという、小憎い演出が光っていました。
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