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いろいろと備忘のための

ジャン・ボードリヤール『象徴交換と死』

象徴交換と死 (ちくま学芸文庫)

象徴交換と死 (ちくま学芸文庫)

現代思想なんて全然わからないけど、興味本位で図書館で借りてみた。なので、部分的にしか読んでいないし不真面目な読書なのだが、それでも面白く読めた。誇大妄想的かつ悲観的なんだけど、刺激的な読書。
訳者解説によると《フランスの著作家は社会学者にあっても文学的な文彩を意図的に偏愛》するそうなのだが、このへんは先日読んだウラジミール・ジャンケレビッチの著書で苦しめられたお陰で、ある程度読みづらさは軽減されたように思う。
経済学を経済学の外側から見るという意味でも興味深い。経済学では、議論を数学的に行うために、「そもそも」の部分を極々簡単な形に仮定する。その「そもそも」の部分を踏み込んで考えると、社会学現代思想になるのかなと。どちらが良い悪いではなく、こういった議論を知っておいてもいいと思う。
システム対個人、権力対奴隷といった議論は、村上春樹の小説を念頭に置いて考えると、割と分かりやすいように思った。曲解かもしれないが、ボードリヤールのいう「象徴界」は、村上作品ににおける「あちら側」に相当するのかもしれない*1。少なくとも、思想家にしろ、小説家にしろ、現代という時代で何を問題としているのか、という点では同じなのな、と思った。

*1:とか思ったが、象徴界-想像界-現実界という用語はジャック・ラカンの言葉でした。失礼しました‥