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いろいろと備忘のための

絞首台のモーリス・ラヴェル

ラヴェル『夜のガスパール』第2曲「絞首台」Le gibet

ラヴェル的な雰囲気の中にも、ラヴェルには珍しい暗さがあって、ラヴェルのなかで一番好きな曲。この曲は、ウィキペディアでは以下のように説明されている。

変ホ短調、Tres lent(きわめてゆっくりと)、4/4拍子。変ロ音のオクターヴが終始一貫して葬送の鐘のように不気味に鳴り響く。きわめて遅く、重々しいテンポはまったく変更されないが、それとは裏腹に拍子はめまぐるしく変化を重ねる(鐘の音に交じって聞こえてくるのは、風か、死者のすすり泣きか、頭蓋骨から血のしたたる髪をむしっている黄金虫か……という詩の内容に準じたものと思われる)。その結果、暗澹茫漠たる雰囲気が醸し出される。初演者のビニェスは、この曲を退屈に感じて、ラヴェルの心証を悪くしたと言われる。

変ロ音の執拗な繰り返しが癖になる、のだけど、ここでの≪葬送の鐘の音のように≫という点が引っかかる。他の文献を見てみても、この変ロ音をこのように具体的な描写として、説明されているけれど、どうなんだろう。現代人の耳からすれば、ロックやブルースにおけるリフレインのようなものとして自然に受け取られ、この説明のように描写的なものとして解釈するのは、不自然に感じてしまう。要するにリズムと和声のガイド役、というのか。それだけ、こういう単音のくり返しはクラシックの中では特徴的なものだ、ということだろうか。

演奏によってテンポ解釈にばらつきがあるようで、演奏時間が1分以上違うものも。この動画はミケランジェリによる演奏。